哺乳類の剥皮方法

ここでは哺乳類の剥皮方法について、テンを例としてご紹介したいと思います。

以前、鳥類の剥皮方法についても紹介しておりますので、ご興味があれば合わせてお読みいただけると幸いです。

STEP.1 毛抜けのチェック

鳥類と同様に、羽根や毛が抜けてしまうほど傷んで(腐敗して)いる場合は手の施しようがありません。解凍したら最初に必ずチェックします。

腐敗の進行が早い腹部や腰周り、目や口周りの毛を指先でつまみ、軽く引っ張って抜けるようであれば、この後の処理に耐えられないので残念ながら諦めます。

また、すでに腐敗臭が発生しているようであれば、その場合も諦めます。

STEP.2 背中の切開

一般的(?)に、腹部と四肢を切開して一枚の皮にするイメージが主流かと思いますが、「ほねとはね」では基本的に中型哺乳類以上のサイズは背開き(肩甲骨付近〜骨盤付近まで)にしています。

これには下記のような理由があるためです。

①切開箇所を極力小さくできる。(仕上げ時に縫合する距離が短く、綺麗にできる)

②腹部は毛が薄いが、背中は毛が長く濃い種が多いため、縫合跡が目立たない。

③型に被せやすい。(被せるというか、なめした皮に型を入れるだけ)

まず、うつ伏せの状態にして指先で背骨の位置を確かめながら毛をまっすぐに掻き分けます。この際、水で根本までしかっりと濡らしてあげると掻き分け易くなります。

STEP.3 腹部まで剥皮

切開した皮の端を指やピンセットで掴みテンションをかけながら、皮と肉の境目(白い薄膜)をメスで切り開きます。

テンションをかけていることにより境目がわかりやすくなる他、少し刃があたるだけで自然に剥がれやすくなり、無理に切って皮を傷つけるリスクを減らせます。

この薄膜を切り開いていくと、やがて腹部左右の切り開きが合流します。

STEP.4 臀部の剥皮と尾椎・大腸のカット

ここから臀部の剥皮を進めていきますが、大腸をカットする際に排泄物が出てくることがあるため、あらかじめ肛門にティッシュなどを詰め込んでおきます。

腹部の剥皮箇所から、左右の太腿外側を切り開き進めていくと、やがて尾の付け根が姿を表すので、胴体寄りの尾椎の関節で切り離します。

尾椎の直下に肛門につながる大腸が現れるため、同じく少し胴体寄りの位置でカットします。

STEP.5 陰茎・睾丸付近の剥(オスの場合のみ)

太ももから膝先まで剥皮を進めると、(オスの場合)腹部側に陰茎と睾丸が姿を表します。

睾丸はこれまで通り剥皮をすることで剥がしますが、陰茎は細い管状のため、メスで切り開かずに指を尿道に掛けて引っ張ることで剥いていきます。

一部の哺乳類を除き陰茎骨(芯)があるため、非常に剥きやすいです。

先端まで到達したらメスでカットします。

STEP.6 後足の剥皮

膝先から剥皮を進めると踵に到達しますが、そのまま剥皮を進めていきます。

四肢の先は細かい腱が多く、なかなか剥きづらいので、メスやハサミを駆使して白い筋(腱)を切りながら指先まで剥皮を進めます。

※キツネなどの肉球が大きめで、足首が細い種類の場合は、足先まで抜き進めることが困難です。その場合はいったん踵の関節を切り離し、踵から先のところの皮を少し切り開き、その穴から足先だけアプローチする必要があります。

先端の爪がついている指骨の根本で関節をカットします。(※爪は皮側に残す。)

この時、あらかじめその種の指の本数・関節数を把握しておくと、カットするべき場所が分かりますので、ネットなどで下調べしておくと安心です。

STEP.7 腹面の剥皮

腹部の剥皮を進めます。

STEP.8 前足の剥皮

後足と同様に前足も指先まで剥皮を行い、皮と切り離します。

(指先までの処理の画像はSTEP.6をご参照ください。)

STEP.9 頭部の剥皮(耳のカット)

残すは頭部の剥皮となりました。

後頭部側から剥皮を進めていくと、やがて耳の根本に到達します。

コリコリの軟骨があるので、皮をつまんだ時の感触や、皮を戻して耳の位置を確認すると分かりやすいです。

ここでも皮を傷つけないように、少し頭骨側を切るつもりで、耳の根本の軟骨を切ります。

STEP.10 頭部の剥皮(眼の周り)

耳からさらに剥皮を進めると、次は目に到達します。

ここでも、手の感触や一度皮を戻して目視することで位置を慎重に確認します。

目の外縁に切れ目を入れてピンセットを差し込み、眼球の裏にある神経を摘んで引っこ抜くと、綺麗に摘出することができます。

STEP.11 頭部の剥皮(口・鼻の周り)

目の先の剥皮を進めると、口の一番後ろ(口角)を切ると歯が現れます。

歯茎に沿って鼻先まで剥皮を行うと、やがて完全に皮と内側を分離することができます。

ここまで完了したら、胴体はすぐに使用しないので、型を製作するまで冷凍庫で保管しておきます。

STEP.12 鼻の軟骨の除去

この時点では、鼻の軟骨がまだ皮に付いているため、メスやハサミを駆使して取り除きます。コリコリした触感がなくなればOK。

STEP.13 唇の切開と髭の根本の徐肉

唇の開くように切開すると、髭の根本のポツポツが現れます。

この間には肉や脂が残っているので、メスとハサミを用いて、できるだけ取り除き、それぞれのポツポツが独立するようにします。

よく見ると規則的に並んでいるため、列の間を除去しいくイメージで作業すると毛根を傷つけずに作業しやすいです。

STEP.14 眼球の分離

先ほど摘出した眼球は、まだ皮に付いているため分離します。

眼球を摘んで少しテンションをかけると透けるほど薄い膜があるので、皮を切らないように丁寧に膜だけをカットして分離します。

STEP.15 耳の軟骨の除去

耳の中には軟骨があるため、テン以上の大きさの哺乳類は取り除いておきます。

耳の穴の少し後ろにコリコリしたクリーム色の軟骨があるので、周辺の肉を引っ張ったりして探りながら見つけます。この軟骨に沿うように耳を袋状剥いていき、最後に残った軟骨をメス・ピンセット・ハサミを総動員して除去します。

この際、耳の前側の皮膚は非常に薄いため、とにかく気をつけながら除去します。

STEP.16 尾の剥皮

最後に尾の中に残った肉と骨を取り出します。

テンやキツネのように尻尾がモフモフの種は、水で濡らしてかき分けてもなかなか綺麗に分けられません。そのため、メスの歯を天井に向けて、先端を滑らせるように皮を切ります。こうすることで刃先に毛があったとしても、毛は左右に自由に動いて逃げられるため、切ってしまう毛を極力減らすことができます。

この後は皮の内側に残った皮下脂肪や筋肉を綺麗に除去してなめしの工程に移っていきますが、鳥と比べて細かい作業が多かったり、種によって体の作り(指の数や髭、尾長、耳の大きさなどなど)が大きく異なります。一概に同じ手順とは言えないため、事前の下調べが非常に重要となります。

「ほねとはね」では以上のように極力メスで切り開くことを最小限にして、仕上がりが綺麗になる背開きを採用しておりますが、他にいい方法が見つかった場合は随時更新していきたいと思います。